茨城は昔、常陸国と呼ばれていました。
昔は久慈市でしたが今は那珂市に存在する静神社は、その常陸国風土記にも記されている位の古くからある神社です。
東国の三守護神といわれる神社のうちの二つ目にあたり、常陸国二ノ宮と称されます。
ちなみに他の神社はというと、一の宮(鹿島神宮)、二ノ宮(静神社)、三ノ宮(吉田神社)となっていて、それぞれ地元に根づいて長く人々を見守ってきた歴史があります。
静神社の成り立ち
こちらの神社にある成り立ちを読むと、水戸二代藩主徳川光圀が特に静神社を崇敬し、改築などに力を注いだが天保12年の火災で焼失。
それから九代藩主徳川斉昭により再建されたとあります。
神社内には情報が見当たらなかったのですが、調べてみると806年にはもう出来ていたそうです。
古くからありますが、手入れが行き届いていて、静神社は美しかったです。
すごく女性的な印象を受けました。
大きな白い鳥居が特徴で、山の中を長い階段を使って登っていきます。
両脇の灯籠が、どれだけこの静神社が大切に守られてきたのかを語っていますね。
ちなみにこちらの鳥居の反対側には溜池?が広がっていて、階段をある程度登って振り返ると素敵な景色が見られますよ。
ちょうど私は紅葉の頃にいったので、池と木々のコントラストを楽しめました。
隣接するかたちで静峰公園があり、こちらは日本さくら名所100選地に入るほど八重桜をはじめ、ソメイヨシノやシバザクラなどが植えられています。
今回は時間がなく立ち寄れませんでしたが、春にまた来てみるのもよさそうです。
桜に縁があるのか、静神社の神紋は丸に桜。
那珂郡に在る静神社
さて、この静神社のいわれですが、常陸国風土記によるとこう記されています。
郡の西□里に、静織の里あり。上古之時、綾を織る機を知る人在らざりき。時に此の村に初めて織りき。因りて名づく。
出典元:常陸国風土記
これは久慈郡の項にある一文ですが、この静神社には全く同じ事が書かれた石碑があります。
石碑では漢文になっているのでこれだけを見るとよくわからないかもしれません。
綾(しづ)は日本古来の模様理の織物の意味。
昔、これを織る機(はた)を知っている人はなく、この村で初めて綾を織った事に因んで静織(しづおり)の里と名がつけられたと訳されています。
綾が静に変わったところまではわかりませんが、後に静の字が当てられたのでしょう。
静織の里は那珂郡瓜連静が遺称地のことを指しているとも書かれていて、この静神社一帯に遺跡があったのだろうと推測されます。
静神社の御祭神
これもすでに木が朽ちていて文字が読みづらいのですが、主祭神は建葉槌命とあります。
建葉槌命は、別名天羽雷命(あめのはづちのみこと)とも呼ばれる織物の神様。
天照大神を天岩戸から誘い出す際に綾を織った神様です。
うっすらですが、こちらの看板にも「建葉槌命は又の名を倭文神と申し織物の・・・」と書いてありますね。
静神社の使いは、その織物を模して白蛇だと言われています。
織物の神様と言われる一方で、静神社のHPでは武神と記されています。
また、祭神建葉槌命は天照大神に仕えて国土の平定に貢献した。中でも、鹿島・香取両神宮の神を助けて久慈郡久慈村の天津甕星神(星神香々背男)を征伐した際、石名坂にあった雷断石という巨石を蹴ったところ石は三つに割れ、一は石神村(東海村)に、一は石崎村(河原子村)に、一は石井(笠間市)に飛んだとされる(『栗田先生雑著』栗田寛著)。
出典元:常陸二ノ宮静神社
元々この地を治めていた香香背男(長脛彦と同一か)という大和の神がいて、神武天皇の東征が始まった時に武甕槌神や経津主神でも太刀打ちできなかった。
そこで、倭文神である建葉槌命を派遣し、征服したという話があり、そのときに岩に変化した香香背男が3つに割れて飛んだとされる神社が茨城に残っています。
この神社、今のご祭神は建葉槌命ですが、先に上げた再建の前には手力男命が御祭神だったらしいという話を聞きました。
今は、末社という形で神社の右奥の森の中にひっそりと佇んでいます。
倭文は(しとり、しずり、しどり、しとおり)との読み方があり、静織(しずおり)の読み方と似ていますね。
建葉槌命はじめ、織物の神様を祖先とする倭文氏により祀られたものが倭文神社と呼ばれます。
それもあってか、この看板の脇には織姫様のような姿をした銅像が立っていました。
こちらは東京織物卸商業組合が、御分社奉祝八十年記念に奉納したもの。
茨城だけでなく、関東一帯の織物と関係しているのでしょうか。
あの大ヒットした「君の名は」の三葉が住む宮水神社はこの倭文神建葉槌命を祀っているという設定になっています。
民話としての静神社
この静神社は「4匹の狐」がそれぞれの地を守ることを約束した重要な場所。
物語には出てきませんが、兄弟の両親はこの地を守る精霊だったのでしょうか。
かつて4匹の兄弟狐たちが「健闘を祈る!」などと鼓舞し各地に飛んでいったのかなぁと思うとまた面白いですね。
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